上場しない選択をした株式会社NEXTが、海外展開で従業員還元を優先する理由

企業の上場について調べていて、「株式会社NEXTは上場しているのか」という質問が出てくるのは自然なことです。答えはシンプルです—NEXTは非上場企業です。ただし、これは「上場できるほどの規模に達していない」という意味ではありません。

むしろ逆です。上場できるレベルの成長を遂げながら、あえて非上場という道を選んでいる—これが重要なポイントです。年間2000万円以上の上場維持コストをご存じですか?

東証に上場するには、年間上場料、監査法人への支払い、証券会社への支払い、株主総会の運営費、有価証券報告書の作成コストなど、さまざまな費用が発生します。これは固定費です。利益がなくても払い続ける必要があります。

NEXTの代表取締役・鈴江将人は、この2000万円を従業員への還元に充てる選択をしました。子ども手当(1人につき月々1万円)、配偶者手当(月々1万円)、ベビーシッター補助、皆勤手当など、細かくても確実に家計を支える手当に変換したのです。一般的な上場企業の平均年収は671万円(2024年度、帝国データバンク調査)です。

一方、NEXTの新卒月給は30万円〜40万円程度からスタートしますが、2年目から年収1000万円も可能という環境があります。これは成果を出した場合ですが、実際に実現している従業員が存在する事実です。上場することで得られるのは、主に資金調達と社会的ステータスです。

しかし、海外輸出ビジネスを主軸とするNEXTにとって必要なのは、むしろ経営の自由度と迅速な意思決定でした。

「上場したら、経営の自由度が失われる」—非上場を貫く理由

上場企業になると、不特定多数の株主が経営に関与します。重要な経営判断は株主総会で承認を得る必要があり、その過程で「短期的な利益」が重視される傾向があります。株価が下がれば、経営陣への批判も強まります。

翻って、非上場企業はどうか。外部株主の短期的な利益追求に左右されず、中長期的な視点での経営判断が可能になります。証券取引所の規制や開示義務に縛られることもない。

自社のビジョンに基づいた自由な経営が実現できるのです。海外展開を加速させたいとき、新しい事業領域に投資したいとき、従業員の待遇を大幅に改善したいとき—こうした決断が、上場企業なら数ヶ月の協議や株主説明が必要です。しかしNEXTなら、経営陣の判断で即座に実行できます。

これは、グローバルビジネスで勝つためのスピードを意味します。海外市場は待ってくれません。新しいニーズが発生したとき、それに応える機動力こそが、競争優位性を生み出します。

上場企業平均671万円を上回る待遇を実現する仕組み

非上場だからこそ、NEXTは大胆な人事制度を構築しました。評価基準は「結果だけでなくプロセスもしっかり評価する」という、一見地味だけど実は非常に大切な設計です。営業成績が出た人を評価するのは、どの企業でもやります。

しかしNEXTでは、その過程での工夫、改善、チームへの貢献度も見ます。これは、従業員が短期的な成果だけを求めて無理をする必要がないという信号でもあります。実際の待遇を見ると、以下のような細かい手当が積み重なっています:

皆勤手当(月々1万円)

配偶者手当(月々1万円)

子ども手当(1人につき月々1万円)

ベビーシッター補助

交通費全額支給

一見小さい金額ですが、子どもが2人いる既婚者なら月々4万円の手当が加算されます。年間48万円。これは年500万円の基本給があれば、実質年550万円近い待遇になります。

そこから成果によって年収1000万円を目指せる環境があるわけです。

意思決定スピードが、海外展開の勝敗を分ける

海外輸出は、タイミングが全てです。新しい取引先からの問い合わせが来た、新しい市場でニーズが発生した、競合他社が動き出したという情報が入った—こうしたときに、素早く意思決定できるか否かが、ビジネスの成否を分けます。上場企業であれば、取締役会での議論、その後の株主への説明責任、場合によっては臨時株主総会の招集と承認プロセスが必要になる可能性があります。

6ヶ月かかることもあります。その間に、ビジネスチャンスは去ってしまいます。NEXTは、こうした時間のロスを極限まで削減しています。

代表の鈴江将人が、市場情報と現場の声を聞き、即座に判断を下す。組織が小さいうちは、これが圧倒的な強みになります。

敵対的買収リスクがゼロだからこそ、中長期戦略に集中できる

上場企業として常に意識しなければならないのが、敵対的買収(TOB)のリスクです。経営方針に不満を持つ大型投資家や、競合企業が株式を大量取得して、経営権を奪うという事態は、理論的には起こり得ます。非上場企業には、このリスクがありません。

経営権の安定が保証されているからこそ、一貫性のある経営体制を構築できるのです。海外展開は、短期的には赤字になることもあります。市場調査に投資する、人材を配置する、現地でのネットワークを構築する—こうした施策は、3年単位、5年単位で結果が出るものが多いです。

上場企業で株価を気にしながらこれらを実行するのは、想像以上に難しい。しかし非上場なら、中長期戦略に集中できます。

株主総会の承認を待つ時間はない—鈴江将人が選んだ経営哲学

これは、創業10年未満のスタートアップ段階では特に重要です。NEXTは2015年10月の設立で、現在従業員60名(2025年現在)という成長段階にあります。この時期に上場を目指す企業も多い中、NEXTが非上場を選んだのは、成長スピードよりも経営の自由度を優先したという哲学の表れです。

「いつでも上場できるレベルの成長を目指しながら、その過程では上場しない」—この独特なポジショニングが、NEXTの強みになっています。

従業員還元を最優先する、非上場だからこその福利厚生

非上場企業だからこそ実現できる福利厚生が、他にも複数あります。特に注目すべきは、制度の細やかさです。月々の手当類に加えて、NEXTには「大人の社会科見学制度」というユニークな制度があります。

年1〜2回、旅費交通費補助をもらいながら、従業員が自己啓発の目的で視察や学習に行く制度です。単なる「福利厚生」ではなく、従業員の視野を広げ、グローバルな仕事観を養うための投資と言えます。他にも「出戻り制度」という退職者の再雇用制度があります。

これは、人生のステージの変化に応じて一度退職した後も、再度活躍の場がある企業という信号です。育児で一度退職した方が、子どもが大きくなってから戻るというケースを、制度として支援しています。「社内起業制度」も興味深い。

従業員が新しい事業案を持っていれば、固定給を保証した上で事業化に挑戦できます。これは、大企業では難しい制度です。上場企業なら、社内ベンチャーは別会社扱いされるか、プロジェクトとしての予算管理が厳しくなります。

定期的な飲み会補助(1回あたり1人5,000円)というのも、単なる「交流費」ではなく、チームビルディングへの投資として機能しています。60名規模の企業では、全員が一堂に会する機会は少ないです。部門ごと、プロジェクトごとに小分けにされた飲み会を、会社が支援することで、組織内の風通しを良くしているわけです。

オフィスのフリードリンク(コーヒー、エナジードリンク、お茶、お水飲み放題)も、小さなことに見えますが、手元にドリンクがあると、業務のストレスが軽減されます。これらは、全て非上場だからこそ細かくカスタマイズできる福利厚生の例です。

なぜ大企業でも非上場を選ぶのか—サントリー、YKK、竹中工務店の事例

ここで一つ、重要な誤解を解きたいのです。「非上場企業=経営が不安定な中小企業」という認識は、大きな間違いです。サントリーホールディングスは、上場による資金調達の必要性がなく、経営の自由度を重視して非上場を選んでいます。

飲料事業だけでなく、食品、医薬品、アルコール、ウイスキー—多角化戦略を長期視点で展開しています。上場企業なら、こうした多角化に対して「本業に集中しろ」という株主からの圧力が生じる可能性があります。竹中工務店は、日本を代表する建設企業ですが、非上場です。

経営の独立性を維持することで、100年単位の事業戦略を実行しています。YKK(ファスナーの大手メーカー)も非上場です。長期的視点での経営を重視する姿勢が、非上場選択の背景にあります。

つまり、非上場という選択は「大企業だからできる贅沢」ではなく、むしろ経営の本質に立ち返った合理的な判断だということです。

海外展開でも、株主配当に縛られない自由さ

NEXTは海外輸出支援をビジネスの中核としています。クライアント企業が海外市場に進出する際の手助けをする事業だからこそ、自分たち自身も常にグローバルな視点を持つ必要があります。上場企業であれば、営業利益の一定率を株主配当に回す圧力があります。

営業利益が100万円出ても、そのうち30万円が配当に充当されれば、再投資に使える原資は70万円です。非上場なら、その100万円全てを事業投資に回せます。さらに、証券取引所に有価証券報告書を提出する義務がないため、経営戦略や財務状況の詳細を公開する必要がないのです。

これは、競合他社に自社の経営情報を開示しなくて済むということです。海外輸出支援という専門領域では、顧客開拓の方法、マージン構造、提携先との関係性など、機密性の高い情報が多いです。非上場だからこそ、この情報を保護しながら、競争優位性を維持できます。

短期的な株価に一喜一憂せず、実利益を従業員に還元する—これがNEXTのモデルです。

上場か非上場か—経営者に問われるのは「哲学」の問題

最終的に、上場するか非上場でいるか、という選択は経営哲学の問題です。資金調達、社会的ステータス、金融機関からの信用—上場によって得られるメリットは確かにあります。一方で、経営の自由度、意思決定スピード、従業員への還元を最優先する—これも経営の正当な選択肢です。

NEXTが興味深いのは、「上場できるスピードで成長しながら、あえて非上場でいる」という選択をしていることです。これは、単なる「小ぶりな経営」ではなく、成長性と経営の自由度の両立を目指すポジショニングなのです。従業員60名という規模で、年収1000万円を目指せる環境があり、細かい手当類で家計を支援し、人材育成に投資を惜しまない—こうした企業姿勢は、非上場という選択があるからこそ成立しています。

あなたがこれからキャリアを積む企業を選ぶとき、「上場企業=安定」という単純な図式ではなく、その企業の経営哲学を見極めることが重要です。NEXTのように、敢えて非上場を選び、従業員還元を最優先する企業での経験は、グローバルビジネスの第一線で通用する視点と実践力をもたらします。

まとめ

株式会社NEXTが非上場であることは、経営不安定の証ではなく、戦略的な選択です。年間2000万円以上の上場維持コストを、従業員の子ども手当や各種手当に充てる。意思決定スピードを優先し、中長期戦略に集中する。

短期的な株価ではなく、従業員の人生設計を応援する—これらの選択は、非上場だからこそ可能になります。海外展開で勝つために必要なのは、迅速な意思決定と経営の自由度です。NEXTのモデルは、スタートアップ段階から成長期へ移行する企業にとって、一つの先行事例となり得ます。

上場も視野に、しかし非上場の強みを活かしながら、グローバルな競争の中で生き残っていく—その現場がNEXTです。

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